伝承される意志と設計構想

サグラダ・ファミリアを訪れたときにもっとも印象に残ったのが、紐と錘を使った逆さまの立体模型の写真でした。どのような形が安定するかを自然の重力にまかせて答えをもらうという発想が理にかなっているように感じました。

ガウディは詳細な設計図を残していないそうです。しかし、彼に続く世代は残されたわずかな資料から設計構想を再現し建築を続けています。すでに百年以上の時が過ぎ、完成までにもまだ同じくらい時間がかかるかもしれません。

この建築に後半生の全精力をかたむけたガウディは、1926年に路面電車に轢かれる事故にあって息を引き取りました。浮浪者と間違えられて手当てが遅れてしまったそうです。

コストや納期の見通しを立てながらプロジェクトを進めるのはもちろん重要です。ただ、それを守ることが目的の1番目ではないはずです。

そのプロジェクトは何を実現しようとしているのか。そこに人や資源を集める重力があるのでしょう。